大阪市北区の裁判所すぐそばの法律事務所、和輝法律事務所です。
これまで様々な勉強会を弊所では行っており、気になった裁判例を簡単ではありますがご紹介します。
今日は、マンション内で違法な民泊営業がなされていることへの対処についてご紹介します。
素材は、東京地裁平成31年2月26日となります。
1 要点
不動産業者は、自ら所有する専有部分で不特定又は多数の者から宿泊料を受けて宿泊させる営業(民泊営業)を行っていました。これに対し、上記民泊営業の中止を求めたものです。
2 事実概要
不動産業者は、旅館業法に基づく簡易宿所の営業許可を取得しておらず、住宅宿泊事業法に基づく民泊事業の届出なども行っていない。管理組合の理事長などから不動産業者は再三に渡り、民泊営業の中止を求められたが、利用状況に変化はなかった。
そこで、不動産業者に対して民泊としての居室の使用停止などを求める訴訟が提起されました。
これに対し、不動産業者は、①民泊営業はしていない②「共同利益に反する」ことはないなどと争いました。
3 結論
裁判所は、以下のようなことを認めております。
①不動産業者が、反復継続して不特定多数の者を所有する専有部分に宿泊させ、対価を得ており民泊営業をしていることを認めることが出来る。
②規約違反を検討するまでもなく不動産業者による民泊営業は、刑罰の対象となる違法な行為であり、度重なる中止を求められたにもかかわらず,民泊営業を実施し続け,マンションの他の区分所有者らの負担の下で,不動産業者のみが経済的利益を得ていることのほか,他の区分所有者らのマンションの利用において一定の不利益が生じていることが認められるとして、共同の利益に反すると認めました。
4 関連する法律、規約
区分所有法6条1項、57条1項
第6条1項 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
第57条1項 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
旅館業法3条1項、10条1号
第3条1項 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
第10条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条第一項の規定に違反して同項の規定による許可を受けないで旅館業を営んだ者
住宅宿泊事業法3条1項
第3条1項 都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区(以下「保健所設置市等」という。)であって、その長が第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理するものの区域にあっては、当該保健所設置市等の長。第七項並びに同条第一項及び第二項を除き、以下同じ。)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。
当該マンション管理規約
規約22条
住宅部分の組合員は,その専用部分を住居,事務所目的以外の店舗又は飲食店等(レストラン,スナツクバー,バー,喫茶店,クラブその他これに類する深夜営業を行なうものを含む)に使用することはできない。